研究概要 |
【目的】ラムノガラクツロナンII(RG-II)は、植物細胞壁多糖ペクチンの一部を構成する多糖である。細胞壁中では、2分子のRG-II単量体(mRG-II)が1分子のホウ酸により架橋されdRG-II-B複合体を形成することにより、細胞壁構造が安定化されている。単離されたdRG-II-B複合体には特定の金属イオンが結合しており、複合体構造の安定化に寄与している。しかし、金属イオンの結合サイトは明らかにされていない。そこで本研究では、RG-II分子内の金属結合サイトの解明を目指す。 【方法】シュガービート細胞壁等から得たmRG-IIを0.1Mトリフルオロ酢酸(TFA)で50℃2h,4h,8h,16hまたは100℃1h処理後、凍結乾燥して、部分加水分解物を調製した。部分加水分解mRG-Hに過剰のLaCl_3を混合し、サイズ排除HPLC/ICP-MS分析した。また、Laと結合するmRG-II部分加水分解物ピークを分取し、糖残基組成をGC分析した。 【結果】mRG-II部分加水分解物の主成分であり、mRG-IIより分子量が少し小さい分子のみに、Laイオンは結合した。結合量は加水分解が進むにつれて少なくなり、100℃1h処理では結合しなかった。また、TFA50℃4h処理で、側鎖BとCの一部が加水分解された。50℃16h処理で、側鎖BとCの約2/3が分解されたが、側鎖AとDはほとんど分解されなかった。100℃1h処理で、側鎖B,C,Dはほとんど分解されたが、側鎖Aは一部残っている可能性があった。以上の結果は、希土類イオンは、単独の直鎖や側鎖、およびそれらの断片には結合しないことを示している。また、希土類イオン結合サイトには、直鎖と側鎖A,Dに加えて、側鎖BまたはCの存在が必要であることを示唆している。
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