研究概要 |
1.ラムノガラクツロナンII(RG-II)は、植物細胞壁多糖ペクチンの一部を構成する多糖である。細胞壁中では、2分子のRG-II単量体(mRG-II)が1分子のホウ酸により架橋されdRG-II-B複合体を形成し、細胞壁構造を安定化している。このことが必須微量元素ホウ素の主な機能である。単離されたdRG-II-B複合体には、特定の金属イオンが結合しており、複合体の安定生成に寄与している。しかし、金属イオンの結合サイトについては明らかにされていない。そこで本研究では、RG-II分子内の金属結合サイトの解明を行った。 2.mRG-IIの側鎖の金属結合サイトへの寄与 0.1Mトリフルオロ酢酸処理により調製した部分加水分解mRG-IIに過剰のLaCl_3を混合して分析溶液とし、サイズ排除HPLC/ICP-MS測定を行った。その結果、加水分解条件が強くなるにつれて、mRG-II主成分ピークの量が減少するとともに、低分子量領域には、いくつかの部分加水分解断片が現れた。Laイオンは、部分加水分解により生成したmRG-II主成分ピーク分子に結合したが、分子量2,000以下の加水分解断片には、結合しなかった。この結果から、mRG-IIのランタノイド結合サイトは、直鎖と複数の側鎖から形成されていることが明らかになった。 3.dRG-II-B中のホウ酸陰イオンの金属結合サイトへの関与 シュガービートdRG-II-B 2.2mgを40mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)500μLに溶解し、半量をcontrolとし、残り半量に0.1M EuCl_3 5μLを加えEu処理試料とし、^<11>B NMR測定を行った。その結果、dRG-II-B中のホウ酸エステル(1:2)に由来するピークは、controlとEu処理のどちらのスペクトルにも、全く同じ-9.6ppmに観測された。この結果から、dRG-II-Bに結合している金属は、ホウ酸陰イオンには直接は配位しておらず、dRG-II-Bの金属結合サイトはホウ酸陰イオンからはある程度以上離れていることが明らかになった。
|