研究概要 |
根粒菌の浸透圧調節機能が根粒菌と宿主との共生に果たす役割を明らかにするために、代表的な浸透圧調節物質のグリシンベタイン(ベタイン)を根粒菌(Bradyrhizobium japonicum, Mesorhizobium loti)で積極的に生産できる高ベタイン生産株を構築し、その根粒着生・窒素固定能力を親株と比較した。その結果、以下の知見が得られた: 1.高ベタイン生産株の構築:Arthrobacter globiformis由来のベタイン合成遺伝子(codA 領域)の導入をPCR法で確認後、コリンオキシダーゼ活性(units/mg protein)を測定した結果、B.japonicumで0.25,M.lotiで0.35であった(両菌株の親株には活性が見られなかった)。更に、B.japonicumの細胞内ベタイン含量(μg/mg dry weight of cell)を^1H-NMRで測定した結果、0.56であった。また培地中への排出が見られた(0.39mM)(親株では検出されなかった)。これらの結果から、codA遺伝子の導入と発現が確認された。 2.根粒着生試験:構築された高ベタイン生産株を宿主に接種し、根粒の数と重量、植物体重量、並びに窒素固定活性を親株と比較した。B.japonicumでは、根粒着生初日が平均1日程度早まり、栽培19日目では根粒数が親株の約5倍、36日目でも1.3倍程度に増加した。根粒重量と窒素固定活性もそれぞれ親株の1.2〜1.4倍程度に増加し、植物体重量も1.1〜1.2倍程度に増加した。これらの結果から、B.jaopnicumでは、ベタインにより根粒着生、窒素固定能力が有意に向上することが明らかになった。一方、M.lotiでは有意な差は見られなかった。M.loti(親株)は、ベタインの生合成能力を有していることが原因である可能性が考えられた。
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