研究概要 |
平成15年度に構築されたグリシンベタイン(GB)生産株を用い、ストレス条件下(低温栽培)における根粒着生能を親株と比較した。また、植物体並びに根粒内のGB含量の測定とその分布を調べた。その結果、以下の知見が得られた: 1.GB生産株(10^7cfu/seed)をダイズGlycine max (L.) cv. Toyomusumeに接種し、低温条件下(明期14h、20℃/暗期10h、10℃)でシードバッグ栽培した。その結果、親株と比較して根粒着生時期が数日程度早まり、着生した根粒の数と重量、窒素固定活性(アセチレン還元活性:ARA)、植物体重量ともに顕著な増加が見られた(親株接種に対する%:根粒数145.0,根粒重量152.4,ARA 222.6,植物体重量107.9)。この傾向は通常の栽培条件(明期14h、22.5℃/暗期10h、18℃)でも見られたが、低温下においてより顕著であることが示された。 2.親株を宿主ダイズに接種した場合は、根粒及び植物葉、茎、根においてGBは検出されなかったが、GB生産株では、根粒中で43.5μg/gFWのGBが検出された。また、根粒組織をNonaqueous fraction法(NF法)で分画し、各フラクションのGB並びにマーカー酵素「phosphoenolpyruvate carboxylase(サイトゾル),β-hydroxybutylate dehydrogenase(バクテロイド),α-mannosidase(液胞),cytochrome oxidase(ミトコンドリア)」の割合から、目的変数にGB、説明変数に各マーカー酵素を入れた重回帰直線をSPSS(ver.6.1)で求め、そこから重回帰式を導いた。その結果、根粒菌(バクテロイド)で生産されたGBは植物サイトゾルに排出されていることが明らかになり、その一部は、ミトコンドリアや液胞にも取り込まれている可能性が推定された。GB分布割合の推定値は、バクテロイド13.0%,サイトゾル45.5%,液胞26.0%,ミトコンドリア15.5%であった。
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