根粒菌(Bradyrhizobium japonicum USDA110)を用いて、宿主(ダイズ)との共生初期過程における根粒菌遺伝子の発現を網羅的に調べた。また、菌体にレポーター遺伝子(gus)を導入して標識菌株を構築し、宿主への感染(根粒形成)を観察した。その結果、以下の知見が得られた: 1.B.japonicum(nodY-lacZ)培養菌液の初期OD_<660>:0.1、50%エタノール種子抽出液(SSE)濃度:20μl/mlの条件で処理後12時間までnodYが安定して発現した。この条件で、培養菌液と等量の5%フェノール/EtOHを加え、ISOGEN-LS(ニッポンジーン)でRNAの抽出、MICROB Express(Ambion)でrRNAの除去を行い、mRNAを得ることに決定した。 2.得られたmRNAから^<33>P標識cDNAを調製し、アレイシートとハイブリダイゼイションを行い、発現プロファイルをイメージアナライザで解析した。その結果、SSE処理後12時間で、共生領域に位置するクローン(特にnod遺伝子群、TypeIII(TTSS)などを含む4つの遺伝子領域)に強い発現が見られ、ゲノム全体で発現したクローンの45%を占めていた。この発現プロファイルはgenistein処理の場合と類似していた。また、共生領域外のクローン(浸透圧調節に関わるABC輸送系など)の発現も見られた。一方、nif、fixなどの遺伝子群を含むクローンは発現しなかった。 3.gus標識菌体の根粒着生・窒素固定力が親株と同等であることを確認した。この菌体を用いて土壌(沖積土)で接種試験をした結果、ベタイン生産株由来の根粒数は親株よりも高かった。また、栽培ポット土壌をスライスした断面を寒天培地に押しつけ、形成されたコロニーをGUS発色させる方法で、根圏の菌分布を調べる実験系の基礎を築いた。
|