研究概要 |
アルファルファ根粒菌のrpoH_1変異株の共生にかかわる表現型の詳細な解析とともに、シグマ因子RpoH_1によって発現される遺伝子群を同定し、その中から新規共生必須遺伝子を見つけることを計画した。rpoH_1変異株によって形成される無効根粒の観察から、宿主細胞への侵入直後にバクテロイドが死滅してしまうのを見出した。一方、プレート培地上では、変異株の界面活性剤・エタノール・酸性pH等に対する耐性が、野生株と比較して低下していることを見出した。これらの結果から、rpoH_1変異株のFix-の直接の原因が、宿主細胞内の環境ストレスに対する耐性度が低下したことにあると結論した。次に、RpoH_1レギュロンの同定に向け、変異株のデオキシコール酸感受性の抑圧を指標にアクティベーションタギングに基づくスクリーニングを実施した。その目的には、rpoH_1変異に影響されない転写パターンを示すgroESL_1のプロモーターをミニトランスポゾンに組み込んだ「可動性プロモーター」を作製し利用した。合計308,880個の形質転換体を扱い、結果として42個のDOC耐性株が得たが、最終的にはRpoH_1レギュロンの同定に結びつかなかった。次に、rpoH_1変異株と野生株との間でトランスクリプトームの比較を行うことによって、RpoH_1制御下の遺伝子の同定を試みるように方針を変えた。種々の培養条件の細胞から抽出した全RNAをプローブに、S.melilotiのDNAマイクロアレイのハイブリダイゼーション実験を行った。その結果、熱ショック処理を施した変異株において、同処理の野生株と比べてシグナル強度が1/4以下に減少した遺伝子を19個見つけることができた。以上の解析で同定された遺伝子は、RpoH_1支配下の新規共生遺伝子の候補として、将来の研究の重要な材料となった。
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