1.ywtB破壊株の生産するPGA 納豆菌野生株(B.subtilis IFO16449)は、PGA合成培地の24時間培養でD-グルタミン酸とL-グルタミン酸の比率が70:30からなるPGAを7mg/ml生産するが、ywtB破壊株は、同培地、同時間培養でほぼ100%のL-グルタミン酸のPGAを0.4mg/ml生産した。野生株は分子量200kDa以上の高分子PGAを生産するが、ywtB破壊株は200kDa以上の高分子PGAと30kDaの低分子PGAを生産した。野生株PGAは、培地中のMn^<2+>イオン濃度の上昇と培養時間の経過によってD-グルタミン酸の比率が高まるが、ywtB破壊株のPGAはこれらの影響をまったく受けず、ほぼ100%のL-グルタミン酸で推移した。 2.ywtB発現ベクターの作製 ywtBのC末端にヒスチジンタグを設計したプライマーを用いてywtBをPCR増幅した。ヒスタグコドンをC末端にもつywtBの増幅断片を一度pUC19に挿入した後、PGAオペロン(ywsC-ywtABC)を保持するpBF1のywtBと交換した。ywtBヒスタグコドンを含むPGAオペロン領域を切り出し、これをpHY300PLKに挿入して、ywtB発現ベクター(pYWTB)を作製した。この発現ベクターをywtB破壊株に形質転換してywtB復帰株(B.subtilis ΔywtB/pYWTB)を構築した。 3.ywtB復帰株の生産するPGA ywtB復帰株は、PGA合成培地の24時間培養でD-グルタミン酸とL-グルタミン酸の比率が80:20からなるPGAを1.5mg/ml生産した。ywtB復帰株のPGAは、野生株のそれと同様に分子量200kDa以上の高分子PGAのみであった。(1)上記で述べたYwsCは、ATPとMn^<2+>イオンの存在下でL-グルタミン酸から高分子PGAを合成するが、D-グルタミン酸からはPGAは合成されない。(2)ywtB破壊株は、ほぼ100%のL-グルタミン酸からなるPGAを生産する。(3)ywtB発現ベクターをもつywtB復帰株は、野生株PGAとほぼ同じD-とL-グルタミン酸の比率のPGAを生産する。これらの結果から、YwtBはPGA合成においてD-グルタミン酸とL-グルタミン酸の取り込みに関与する機能を担っていることが考えられた。
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