(1)納豆菌(B.subtilis IFO16449)のγ-ポリグルタミン酸(PGA)の生合成に関与するPGAオペロン(ywsC-ywtABC)のうち、ywsCとywtAの遺伝子破壊株はPGAをまったく生産しなかったが、ywtB破壊株は少量のPGAを生産した。野生株はD-とL-グルタミン酸の比率が70:30の高分子PGA(分子量200kDa以上)を生産するが、ywtB破壊株はほぼ100%のL-グルタミン酸からなる高分子PGAと低分子PGA(30kDa)を生産した。ywtB発現ベクターを保持するywtB復帰株は、D-とL-グルタミン酸の比率が80:20からなる高分子PGAを生産した。これらの結果と、YwsCはATPとMn^<2+>イオンの存在下でL-グルタミン酸から高分子PGAを合成するが、D-グルタミン酸からはPGAは合成されなかった。ywtB-glr破壊株、ywtB-yrpC破壊株、ywtB-glr-yrpC破壊株は、ywtB破壊株と同様にL-GluのみからなるPGAを生産し、生産されたPGAの分子量も同じであった。これらの結果は、YwsCとYwtBの酵素的性質と考えあわせて、YwtBはグルタミン酸ラセマーゼ活性を有することが示唆された。(2)納豆菌PGA分解酵素(YwtD)の低分子分解産物(F2)に、納豆菌γ-glutamyltranspeptidase(GGT)、ウシ由来GGTの他に、PGAのL-GluとL-Gluの間を特異的に切断するラット由来のendo-γ-L-glutamylhydrolaseと、PGAのC-末端からL-Gluのみを順次切断するcarboxypeptidase Gを作用させて、F2の構造を解析し、YwtDは、N-末端側に存在するL-Gluを認識してC-末端側のD-GluとD-Gluの間を切断する特異性の高いエンド型PGA分解酵素であると推定された。
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