研究概要 |
真核細胞において、細胞周期及び細胞分化の制御は細胞機能の基本である。分裂酵母の細胞周期,分化はSty1・MAPキナーゼカスケードの支配下にあることが予想されてきた。しかし、MAPキナーゼカスケードは情報伝達機構であり、シグナル受容機構と連携して初めてその機構が完結するはずである。我々は分裂酵母における二成分制御系がMAPキナーゼカスケードの上流で働くシグナル受容系であることを示唆する結果を蓄積しつつある。分裂酵母の二成分制御系には3種類のHisキナーゼHK(Phk1,Phk2,Phk3)、1種類のリン酸リレー仲介因子Hpt(Spy1)、2種類のレスポンスレギュレーターRR(Mcs4,Prr1)が存在する。これまでに、3種類のHKがMcs4を介して細胞周期を制御して(シグナル→Phk1/2/3→Spy1→Mcs4→Sty1・MAPキナーゼ→G2→M期移行制御)というモデルを構築した。もう一つのRRに相当するprr1欠損株は胞子形成できず、不稔である。このことは二成分制御系が接合.減数分裂を介した胞子形成にも関与している事を示唆している。分裂酵母は窒素源枯渇に応答して胞子形成するが、HKs欠損株は窒素源が存在しても胞子を形成することから,(シグナル→Phk1/2/3→Prr1→胞子形成)という図式が描ける。今回「どのようなシグナルに応答しているか?」を解析した結果、以下の事を明らかにできた。1.mcs4,prr1欠損株は培地に加えた酸化剤に感受性となる。2.分裂酵母の野生株は嫌気培養すると窒素枯渇条件下でも胞子を形成しないが、過酸化水素を添加すると胞子を形成する。3.一方、HKs欠損株は酸化ストレスの有無にかかわらず好気・嫌気両条件下で接合する。以上のことからHKsが酸化ストレスに応答して胞子形成を制御し(酸化ストレス→Phk1/2/3→Prr1→胞子形成)というモデルに発展させることが出来た。
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