大腸菌のγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)はD体、L体いずれのγ-グルタミル化合物も基質とする。代表的な基質であるD/L-グルタミンとD/L-γ-グルタミル-p-ニトロアニリドに対する酵素化学的パラメーターを求めたところ、D体に対するKm値はL体に対するKm値に比べて10倍ぐらい大きい値であった。このことは、α炭素に付いているアミノ基、カルボキシル基の両方を認識している残基が存在することを示している。GGTのアミノ酸配列とクラスIVセファロスポリンアシラーゼのアミノ酸配列のホモロジーは驚くほど高い。特にこれまでにアミノ酸配列が明らかになっているGGTの間で、完全に保存されている残基はクラスIVセファロスポリンアシラーゼでもよく保存されている。そのうちの一つである大腸菌のGGTの433番目の残基に当たるAsp-433に相当するヒトのGGT残基(Asp-423)は基質であるγ-グルタミル化合物のα位のアミノ基と相互作用して安定化させていることが示唆されていた(つまり、Asp-433は活性中心を形成する残基の一つと考えられた)。この残基はクラスIVセファロスポリンアシラーゼではアスパラギンであったので、D433N変異を導入したところ、GL-7-ACAアシラーゼ活性を持つようになり、GGTをセファロスポリンアシラーゼに変換することに成功した。一報、この残基に相当するBacillus subtilisのAsp-445をAlaに置換したところ、転移活性を完全に失ったものの、加水分解活性は保持していた。また、加水分解活性に対する酵素化学的パラメーターは、野生型のものと大きくは違わなかった。結晶化については、Spring-8で収集したデータが良く、初期解像度で2Aの回折強度データを得ることができ、9割ぐらいの残基のモデリングに成功した。
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