研究概要 |
石油中の難除去性含硫化合物ジベンゾチオフェン(DBT)は、石油の燃焼の際に亜硫酸ガスを生成し大気中に放出されて酸性雨の原因物質となることから近年特に注目を集めている.したがってDBTおよびその誘導体の微生物代謝、特に脱硫反応機構の解明の研究は極めて重要な課題である。今までに我々が明らかにしてきたDBTの高脱硫活性のRhodococcus属細菌脱硫系の中で最終段階の酵素DszB(デスルフィナーゼ)は脱硫反応を触媒する新規酵素であり、またDszC、Aとカップルするフラビンレダクターゼは脱硫代謝に重要な役割を演ずる酵素である。そこで本研究では高効率脱硫プロセスの構築を目標としてDszBの立体構造解明とそれに基づく活性、安定性および発現量の向上、およびフラビンレダクターゼの特性解明と効率的な脱硫代謝酵素系の構築を目的として、下記の成果を得た。 1.すでに高発現し酵素化学的特性を解明したDszBの分子遺伝学的特性の解明と結晶化を行った。 2.好熱性非脱硫細菌のフラビンレダクターゼの精製、クローニングを行い、現在同時に高発現させつつある好熱性の脱硫菌由来DszC、Aとの共発現を行い高温域での脱硫反応の最適化を図った。 3.DszB結晶酵素のX線構造解析に基づき、活性部位近傍に存在するアミノ酸残基を置換した種々の変異酵素遺伝子を構築し、変異酵素を発現する大腸菌の無細胞抽出液中での活性を測定したところ、Q65をヒスチジンに置換したDszB(Q65H)の熱安定性、至適温度が野生型DszBを上回ることを見出した。 4.50℃で脱硫することができる好熱性脱硫細菌Bacillus subtilis WU-S2B由来の脱硫酵素BdsC, A, Bを精製し特性の解明を行った。
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