研究概要 |
L.pentosus D-LDHの活性部位には活性に関与するとみられる主鎖原子が存在する。この主鎖原子の役割を解明するため、この主鎖を含むループ構造(活性ループ)と水素結合を形成しているAsn97をAspへ置換した。その結果、活性ループのコンホメーション、及び主鎖原子の位置と方向が不安定化し、酵素の最大反応速度は変化しなかったが、基質ピルビン酸に対する親和性が大きく低下した。一方、本酵素と立体構造が大きく類似するParacoccus sp.12-A株のギ酸脱水素酵素(FDH)において、Asn97に相当する位置のGlu141をAsnに置換したところ、基質ギ酸に対する親和性には大きな変化がなかったが、最大反応速度は大きく低下し、加えてグリオキシル酸を還元する活性が大きく上昇した。これらの結果から、D-2-ヒドロキシ酸脱水素酵素とFDHでは、相当位置の活性ループ主鎖は異なる役割を果たしており、これらの役割の相違には、1アミノ酸残基の性質が本質的に関与していることが明らかになった。 一方、L.caseiのアロステリック型L-LDHにおいて、調節部位のHis188残基をAsnとAspに置換したところ、活性化因子フルクトース1,6-二リン酸(FBP)による活性化効果は大きく減少したが、FBP非存在下では、本来の基質であるピルビン酸よりも大きな側鎖をもつ2-ケト酸に対する活性が大きく増大した。また、これらの変異型酵素では、大きな側鎖をもつ2-ケト酸がFBPに代わって大きな活性化効果を示した。すなわち、本酵素においては、触媒部位と調節部位の両者に基質が結合し、これら両者の結合が協同して基質に対する親和性を決定していることが示された。
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