海洋細菌Alteromonas sp.O-7株が菌体外に産生するプロテアーゼの中で、鉄イオン取り込み機構に関与するAprIIおよびキチン分解機構に関与するAprIVの遺伝子発現を調節するタンパク質を同定することを目的に研究を行っている。まず、キチン分解系に関与する遺伝子の発現調節タンパク質のN末端アミノ酸配列を決定した結果、本タンパク質は細菌の2成分制御系のレスポンスレギュレーターArcAに相同性を有するタンパク質である可能性が示唆された。そこで、得られたアミノ酸配列からミックスプライマーを作製し、arcA遺伝子をクローニングした。塩基配列より推定されたArcAは、N末端側にヒスチジンキナーゼArcBによりリン酸化されるレシーバー領域およびC末端側にヘリックス・ターン・ヘリックス構造を有するDNA結合領域で構成されるタンパク質であった。次に、aprIIおよびaprIV遺伝子発現に関与すると思われるタンパク質の高発現系を構築した。これらのうち、aprII遺伝子発現に関与すると思われるAprRタンパク質は不溶化し、精製することができなかった。一方、aprIV遺伝子発現に関与すると思われるArcAはグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(Gst)との融合タンパク質(GstArcA)として可溶化の状態で発現した。そこで、本科学研究経費補助金により導入したAKTAprimeにより電気泳動的に単一にまで精製し、プロテアーゼによりGstとArcAに切断した。これらを用いてゲルシフトアッセイを行ったところ、ArcAおよびGstArcAはaprIV遺伝子上流域に結合することが明らかとなった。先にも述べたように、ArcAはArcBによりリン酸化されることから、平成16年度はArcBの高発現系を構築し、リン酸化ArcAのキチン分解系に関与する遺伝子の発現調節機構について詳細に検討する予定である。
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