昨年度は、本菌株由来キチン結合プロテアーゼ遺伝子の調節タンパク質であると思われる2成分制御系タンパク質(ArcAおよびArcB)の高発現系を構築し、本科学研究経費補助金により導入したAKTAprimeを用いてグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(Gst)との融合タンパク質(GstArcAおよびGstArcBΔN)を精製した。本年度は、まず、リン酸化ArcA(ArcA-P)が共通配列を認識するかどうかについて検討する目的で、[Y-^<32>P]ATPを用いてGstArcBΔNのArcAリン酸化能について検討した。その結果、GstArcBΔNはArcAをリン酸化することが明らかとなった。さらに、ArcAおよびArcA-Pを用いてゲルシフトアッセイを行った結果、ArcA-PはArcAと比較して約2倍の結合能を有していた。次に、本菌株のキチン分解機構に関与するタンパク質であるchiA、chiB、chiC、chiD、cbp1およびaprlV遺伝子上流域に対するArcA-Pの結合能について比較した。その結果、ArcA-PはすべてのDNA断片に結合能を有するが、特にchiDおよびaprlV遺伝子上流域との結合において、他のDNA断片と比較してその移動度に顕著な差があることを認めた。そこで、ArcA-PのそれらDNA断片に対する結合能を詳細に解析する目的で、BIACOREを用いて検討した。その結果、chiDおよびaprlV遺伝子上流域との結合において、他のDNA断片と比較して結合能に顕著な差があることを認めた。次に、ArcA-PのChiDのおよびaprlV遺伝子上流域における結合領域を明らかにする目的で、フットプリンティングを行った。その結果、ArcA-Pは両遺伝子の転写開始点直前および直後の複数個所を認識して結合することが明らかとなった。
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