研究概要 |
(1)エヒロタケの性生長に影響を与える外的シグナル因子の調査 トリプトファン(Trp)/インドール(Ind)類縁物質がスエヒロタケ子実体形成に及ぼす効果を調査した.Trp/Indの代謝経路物質のアントラニル酸(AA),インドール酢酸(IAA)および類似化合物のインドール酪酸(IBA),インドールカルボン酸(ICA),インドールプロピオン酸(IPA)の子実体形成促進効果は,IBA>ICA≧IPA≧IAA≧AA>Ind≧Trpであった.Trp^+とTrp^-株との促進効果比較から,Trp^-株は子実体形成進行の重要な機能を失っていることが判明した. (2)スエヒロタケのTRP1遺伝子の解析 ind1変異株(インドール耐性)とcfn1変異株(カフェイン耐性)は,ある交配型組合せで,Trp^+ならば和合性を,Trp^-ならば半和合性を示す.また,スエヒロタケ遺伝マーカーtrp1は劣性変異で野生型トリプトファン合成遺伝子TRP1によって相補される.そこで,野生型TRP1および変異型trp1の配列を解析した.TRP1遺伝子産物はグルタミンアミノトランスフェラーゼ,インドール-3-グリセロールリン酸シンターゼ(IGPS)および5-ホスホリボシルアントラニル酸イソメラーゼの三重機能酵素であり,trp1変異はIGPS領域に1つのアミノ酸置換(L→F)を引き起こす1塩基置換であった. (3)ind1変異とcfn1変異の遺伝子量がスエヒロタケの表現型に及ぼす効果の解析 細胞内に0,1,2個の化合物耐性変異を有する交配株を作出して,核移動および子実体形成における性生長異常の程度が,ind1変異とcfn1変異の遺伝子量に依存することを明らかにした.また,変異遺伝子量が2個/細胞の場合には,交配株の交配型組合せに依存することなく生長異常の表現型が観察された.
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