研究概要 |
1.ペプチドグリカン認識タンパク質(PGRP) cDNAのクローニングとその発現 エリ蚕脂肪体で発現するPGRP cDNAをクローニングした.このcDNAから推定されるアミノ酸配列は,エリ蚕体液から単離したタンパク質およびカイコ,タバコスズメガから単離されている鱗翅目昆虫タイプとは異なっており,ショウジョウバエのLBタイプに近いものであった.このことから,エリ蚕には少なくとも2種のPGRPが存在することが明らかになった.このPGRPcDNAは,脂肪体と中腸で特に強く発現しており,バクテリアまたはペプチドグリカン(PGN)の注射により誘導された. 2.バクテリアにより誘導されるHdd11 cDNAのクローニングとその発現 エリ蚕脂肪体でバクテリアにより誘導される遺伝子をsuppression subtractive hybridization (SSH)法により検索し,62種の遺伝子断片を得た.その中から,機能未知の免疫関連遺伝子Hdd11 cDNAをクローニングした.この遺伝子は,無処理幼虫では全く発現していないが,バクテリア,PGN,β1,3-グルカンなどの注射により,脂肪体と中腸で誘導された. 3.バクテリアにより誘導されるtyrosine 3-hydoroxylase (TH)遺伝子のクローニングとその発現 THはdopamine生合成の律速酵素で,神経伝達およびクチクラ形成に関与していることが知られているが,エリ蚕脂肪体でバクテリアにより誘導されるTHを発見し,cDNAをクローニングした.この酵素は,似た反応を触媒するフェノールオキシダーゼとは全く別のタンパク質であり,生体防御にどの様に関わっているか興味を持たれる. 4.バクテリアにより誘導されるレポシンcDNAのクローニング エリ蚕から,カイコのレボシンcDNAと相同性のあるcDNAをクローニングしたが,このcDNAには抗菌性タンパク質であるレボシンペプチドに相当する領域が無く新規の遺伝子であると考えられる.
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