研究概要 |
1.バクテリアにより誘導される遺伝子のクローニング ペプチドグリカン(PGN)認識システムの解明と,バクテリア侵入により誘導される遺伝子群の解析を通して昆虫の生体防御システムを遺伝子レベルで解明することを目的として,suppression subtractive hybridization法を用いて,エリ蚕においてバクテリア感染により特異的に誘導される数十種の遺伝子断片を得た.これらをプローブとして,免疫化エリ蚕脂肪体cDNAライブラリーを検索していくつかの全長cDNAをクローニングした. 2.Hdd11遺伝子の解析 機能未知遺伝子Hdd11は,バクテリア菌体およびPGNの注射により脂肪体で特異的に誘導された. 3.lebocin様遺伝子の解析 エリ蚕から,カイコのlebocin遺伝子のプロシグメント部分とのみ高いホモロジーを有するが,抗菌性ペプチドlebocinをコードしないcDNAを得た.この特異な遺伝子の構造,発現組織,誘導因子などの解析により,この遺伝子は抗菌性ペプチド生成以外の別の未知の機能を有するものであることが明らかになった. 4.バクテリアにより誘導されるtyrosine 3-hydroxylase(TH)遺伝子の解析 THは神経伝達物質であるドーパミン合成の律速酵素として知られており,脳などの神経系で主に発現している.エリ蚕において,このTH遺伝子がバクテリアにより脂肪体で誘導されることを見出した. 5.バクテリアにより誘導されるセリンプロテアーゼ遺伝子の解析 2種の誘導性セリンプロテアーゼ遺伝子をクローニングした.その一つはプロフェノールオキシダーゼ活性化に関わる酵素と思われる.
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