翻訳後修飾の網羅的解析系の確立をめざした昨年度における本研究から、哺乳動物細胞で生ずる主要なタンパク質修飾がin vitroあるいはin vivo代謝標識法で検出可能であることが明らかになった。また、タンパク質N-ミリストイル化をモデル修飾反応としてとりあげ、無細胞タンパク質合成系を用いたin vitro代謝標識法を用いて修飾反応に要求されるアミノ酸配列要求性を検討した結果、これまで知られていなかった新たなアミノ酸配列要求性が見い出された。 そこで、本研究ではこの新たに見い出された配列要求性を適用することにより、これまでに見い出されていなかった新規のN-ミリストイル化タンパク質を発見することを目指して、これまでN-ミリストイル化タンパク質の存在が報告されていない哺乳動物由来の膜タンパク質について、特に重要な生理機能を有することが知られているG-タンパク質共役型受容体(GPCR)に注目して解析を行った。その結果、昆虫およびヒト由来の数種類の生体アミンレセプターがN-ミリストイルされていること、このうちカイコ由来のチラミンレセプターがN-ミリストイル化されておりこのN-ミリストイル化されたN-末端は小胞体膜通過し細胞膜表面に露出していることが明らかになった。これらの結果より、ゲノム情報から、新規の翻訳後修飾タンパク質を見い出すのにin vitro代謝標識法が極めて有用であることが確認された。
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