1.テロメラーゼ触媒サブユニット遺伝子転写制御機構の解析 ヒトテロメラーゼ触媒サブユニット遺伝子(hTERT)プロモーターの抑制能を有する因子の検索を行った結果、炎症性サイトカインシグナル経路の下流キナーゼであるTAK1、その下流MAPキナーゼであるp38、およびPKC-δがhTERTプロモーター抑制能を有することを明らかにした。TAK1は、hTERTプロモーターに存在するSp1へのHDACのリクルーを介して転写抑制を引き起こすことを明らかにした。 2.マウステロメラーゼ触媒サブユニット遺伝子の転写制御機構の解析 ヒトおよびマウステロメラーゼ(hTERTおよびmTERT)プロモーターの解析から、両プロモーターの制御機構が大きく異なっていることが明らかとなった。つまりhTERTプロモーターは、ガン細胞および幹細胞でのみその活性が観察されるのに対し、mTERTプロモーターは正常・ガン細胞を問わず、非常に強い活性を有していることが明らかとなった。さらに、mTERTプロモーターは、hTERTプロモーターにおいて優勢な転写活性化因子として知られているc-Mycの制御下にはなく、マウス独自の転写活性化機構を有していることが明らかとなった。そこでmTERTプロモーター特異的転写活性化因子の検索を行った結果、転写活性化に寄与するcisエレメントの同定と転写活性化因子の同定に成功した。この転写活性化因子の個体での発現は、mTERT発現と非常によい相関を示し、mTERT発現の遍在性を説明しうるものと考えられた。
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