研究概要 |
本研究では、アミロペクチンの分岐構造に関する基礎的情報を得るための分析手法を開発し、得られた情報に基づき分岐構造モデルの構築を試みた。 1.アミロペクチンの分子量分布をHPSECで分析する諸条件を検討した結果、示差屈折計による重量分布では単一のピークしか示さないが、蛍光検出による数分布では2成分に分離可能であった。 2.アミロペクチンのβ-アミラーゼ限界デキストリン(β-LD)の単位鎖長分布を微量で調製・分析するため、酵素の反応条件やマルトースの除去方法を検討した結果、4〜5mgのアミロペクチンを用い、蛍光標識/HPSEC法で鎖長分布を測定する方法を確立した。β-LDの鎖長分布は植物種で異なり、鎖長分布をAおよびB1〜B3の4画分に分画して比較すると、A/B1や(A+B1)/(B2+B3)のモル比は植物種起源や澱粉粒の結晶形と関連性のあることが示唆された。つぎに、アミロペクチンをまずホスホリラーゼで、ついでβ-アミラーゼでそれぞれ限界まで分解して得られる、φ,β-限界デキストリン(φ,β-LD)の微量調製・分析法を確立し、その鎖長分布を調べた。φ,β-LDの鎖長分布は植物種で異なり、A/B1や(A+B1)/(B2+B3)のモル比は植物種起源や澱粉粒の結晶形との間に関連性が認められ、β-LDを用いた分析結果と矛盾しないこと、解析の目的によってこれらのデキストリンを使い分ける必要性が認められた。 3.上の結果をもとに、側鎖の数や分岐の内部鎖長、分岐結合間隔などを考慮して、アミロペクチンのクラスターモデルを構築した。澱粉粒の結晶形がA形を示すものとB形を示すものとでは、構築したモデルの特長は大きく異なり、結晶形と分岐構造との関連としてこれまで知られていた、クラスターを構成する単位鎖の平均鎖長が異なるのみならず、クラスター内での分岐結合の位置とその分布も明確に異なると結論づけた。
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