申請者は糖鎖の細胞内における新しい機能を見つけるべく、糖鎖認識分子(レクチン)のスクリーニングを行い、糖鎖を認識するユビキチンリガーゼの構成成分であるF-boxタンパク質Fbx2を発見した。解析の結果、本リガーゼは分泌系タンパク質の品質管理において、フォールディングやアセンブリーの失敗したタンパク質を除去する小胞体関連分解(ERAD)に関わるものであることが推定され、糖鎖が細胞内の不要タンパク質のクリアランスの目印になることを提唱している。本研究においては、この糖鎖認識ユビキチンリガーゼの標的識別機構を構造化学的、生化学的、化学生物学的様々な手法を用いて明らかにすることを目的とし、今年度は以下の4項目について研究を遂行し成果を得た。 (1)Fbx2の標的分子の同定とクローニング 現在までに、インテグリンβ1以外の標的として4種類の分子を精製し、アミノ酸解析により同定し、cDNAのクローニング、蛋白質発現系を作成した。 (2)Fbx2の糖鎖結合特異性の解析 種々のオリゴ糖を用いて溶出し、ウエスタンブロッティングで定量的に解析できる系を開発し、この系を用いて、各オリゴ糖のアフィニティの差を検討し高マンノース型糖鎖のどの部分が結合に必須であるかを解析し、J.Biol.Chem.誌に報告した。 (3)Fbx2の構造解析 Fbx2の糖鎖結合部位を詳細に検討するため、X線とNMRによる構造解析を行った。この成果はNature struct.Mol.Biolに報告し、受理されている。 (4)Fbx2相同遺伝子のクローニングと糖鎖結合能の解析 コンピュータ上の解析からFbx2にはいくつかの相同遺伝子が存在したが、そのうちの一つがFbx2と同様に糖鎖を認識するリガーゼであることが判明したので、解析を進めJ.Biol.Chem.誌に報告した。
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