1)アトピー性皮膚炎患者の健康な皮膚に発疹を誘導するα-acaridialのタンパク質との反応性 アトピー性皮膚炎患者の健全な皮膚にα-acaridialを塗布すると、明瞭な陽性反応が誘導される。そこで、α-acaridialとタンパク質との反応性やタンパク質側鎖官能基との反応様式について検討した。 α-Acaridialや湿疹誘導活性のないcitralを用い、リン酸バッファー-アセトニトリル中(pH5.5)、36℃でBSAやアミノ酸類縁体と反応させた。BSAとインキュベートした場合、α-acaridialは30時間で100%が消失するのに対し、citralでは67%が検出された。また、タンパク質側鎖のアミノ基・メルカプト基とα-acaridialは反応し、それぞれピロール環・フラン環構造を形成した。 2)トウモロコシに揮発成分を放出させるエリシターvolicitinの幼虫による生合成 鱗翅目昆虫幼虫の吐き出し液中にあるvolicitin[N-(17S-hydroxylinolenoyl)-L-glutamine]は、食害した植物に揮発成分を放出させるエリシターであり、揮発成分は天敵である寄生蜂にとって宿主探索の重要な手掛かりとなる。幼虫が何故volicitinを持つのかを明らかにする目的で、ハスモンヨトウにおけるvolicitin生合成メカニズムを検討した。 終齢幼虫のそ嚢、中腸、囲食膜の各組織や中腸内容物を取り出し、基質となるリノレン酸ナトリウムと^<15>Nラベル化グルタミンとともにインキュベートした。12時間後に抽出し、LC/MS/MSで分析したところ、in vitroでのvolicitinの生合成を主に中腸組織で確認した。また、その前駆体であるN-linolenoyl-L-glutamineも同様に中腸組織で縮合された。また、体液中のグルタミン量と体内のvolicitin類縁体量を比較すると、血中グルタミンの約20%に相当するグルタミンがvolicitin類縁体として虫体内に存在した。Volicitin類縁体が虫体内のグルタミン代謝に何らかの役割を持つと示唆される。
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