本研究では、3年計画の最終年度として、(1)リポソームを用いたMg^<2+>膜輸送活性測定系の確立、および(2)微生物のMg^<2+>膜輸送タンパク質と相同性の高い植物タンパク質cDNAを大腸菌で発現、精製して、細胞そのもの、あるいはrecombinant proteinをリポソームに組み込んだMg^<2+>膜輸送系のMg^<2+>輸送能測定に取り組んだ。 1 Mg^<2+>膜輸送活性測定系の確立 放射性^<28>Mgは使用が困難であるため、蛍光性Mg^<2+>濃度測定試薬mag-fura-2を用いて、リポソームによるMg^<2+>膜輸送活性測定系の確立に取り組んだ。現在のリポソーム作成方法では、リポソーム内へのmag-fura-2の保持効率が非常に悪かったが、脂質の種類、水和時間、凍結融解回数の検討、改善の結果、保持効率は30%以上にまで上げることができた。これによって、mag-fura-2を用いる活性測定が可能となった。 2 植物Mg^<2+>輸送体recombinant proteinの調製とMg^<2+>膜輸送活性の測定 現在、Mg輸送体タンパク質として、その遺伝子あるいはcDNAがクローニングされ、Mg^<2+>輸送能が分子レベルで証明されているのは原核微生物のMg^<2+>輸送体(CorA)のみである。本研究では、シロイヌナズナArabidopsis thaliana cDNAを材料として、上記微生物Mg^<2+>輸送体タンパク質CorAと相同性の高いタンパク質cDNAを発現ベクターに組み込み、大腸菌で発現させた。発現ベクター、可溶化剤の検討、改善の結果、80%以上にまで目的タンパク質を世界ではじめて精製することができた。上記、活性測定系の確立と合わせ、今まさに、Mg^<2+>膜輸送タンパク質の分子機能解析が、世界ではじめて可能になったと言えよう。
|