研究概要 |
アーバスキュラー菌根(AM)共生においてAM菌がどのようにして宿主植物を認識するのかほとんど明らかになっていない。AM菌の菌糸は根の近傍に達すると菌糸先端が激しく分岐する。この形態分化はAM菌の宿主認識反応と見なされており,根分泌物中に含まれる脂溶性の低分子化合物によって引き起こされることが分かっている。本物質はAM共生研究者の間でbranching factor(BF)と呼ばれているものの,これまでに単離・同定がなされていない。本研究ではミヤコグサとニンジンの根分泌物からのBFの精製を行った。 BF活性は新たに開発したGigaspora margaritaの発芽胞子を用いたペーパーディスクアッセイにより評価した。ミヤコグサおよびニンジンを低リン酸栄養条件下で水耕栽培し、得られた水耕液をDiaion HP-20カラムに通した後,アセトンで溶出して脂溶性の根分泌物を回収した。これを酢酸エチルで抽出したところ,活性は両植物共に中性物質画分のみに見られた。この画分を各種クロマトグラフィーで精製したところ、ミヤコグサとニンジンとでは活性物質の溶出画分が全く異なることから、これら植物が異なるBFを生産することが明らかとなった。ミヤコグサでは160lの水耕液からBFの精製を行い、最終的に逆相ODS HPLC分取により20ng/disc以下で活性を示す精製画分を得た。また、ニンジンも同様に250lの水耕液からBFの精製を行い、最終的に逆相ODS HPLC分取により活性ピークを1つ特定した。しかしながら両者ともに得られた活性物質が極めて微量であったため、スペクトル解析は困難であった。
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