研究概要 |
アーバスキュラー菌根(AM)共生におけるAM菌と宿主植物の相互認識機構はほとんど明らかになっていない。AM菌の菌糸は根の近傍に達すると菌糸先端が激しく分岐し、この形態分化はAM菌が最初に示す宿主認識反応と見なされており,根分泌物中に含まれる脂溶性の低分子化合物によって引き起こされることが報告されている。本物質はbranching factor (BF)と呼ばれているものの,これまでに単離・同定がなされていない。そこで、本研究ではミヤコグサとニンジン、ソルガムの根分泌物からBFの精製および構造の解明を目指した。 BF活性は新たに開発したGigaspora margaritaの発芽胞子を用いたペーパーディスクアッセイにより評価した。三種類の植物を低リン酸栄養条件下で水耕栽培し、得られた水耕液をDiaion HP-20カラムに通した後,アセトンで溶出して脂溶性の根分泌物を回収した。これを酢酸エチルで抽出したところ,活性はいずれの植物においても中性物質画分のみに見られた。この画分を各種クロマトグラフィーで精製し、ミヤコグサから新規物質である5-デオキシストリゴールを明らかにした。また、ニンジンとソルガム根浸出液に含まれる活性物質がストリゴラクトン類の新規物質であることを併せて明らかにした。5-デオキシストリゴールは1ng/disc〜30pg/discの範囲でブランチング活性を示した。 ストリゴラクトン類は根寄生雑草の種子発芽刺激物質として知られているものである。今回、植物界における普遍的な現象である菌根形成における宿主認識シグナルとしての機能が見出されたことから、根寄生雑草の被宿主植物からも単離されていることも理解できることとなった。
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