豆乳を2つの温度で加熱したときのタンパク質の構造変化について調べるために115℃で加熱処理した豆乳を一旦100℃以下の温度でホールドしてから氷冷した。その結果、70、80℃でホールドした場合にはいずれもタンパク質表面疎水性度は二段階目の加熱によって減少した。このことはグリシニンの変性温度よりも低い温度でのホールドが加熱変性したタンパク質のリホールディングを促進したものと推測された。一方、100℃で二段階目の加熱を行うと、表面疎水性度はホールド時間の延長とともに増加傾向を示し、この増加は100℃でホールドしている間もタンパク質の変性が進行しているためと推測された。沈殿量を調べると70、80℃でホールドすると沈殿量が増加し、タンパク質のリホールディングによって分散安定性が低下したものと考察された。 次にホエータンパク質としてβ-ラクトグロブリンに着目し、その加熱変性挙動とコールドセットゲルの機能特性に及ぼす冷却速度の影響について検討した。その結果、タンパク質の加熱変性度としてタンパク質表面疎水性度を測定したところ、100℃で加熱後に室温で冷却した試料と比較して直ちに氷中で冷却した試料の方が有意に高い値を示し、タンパク質表面の反応性が高く保たれているものと考えられた。 そこで、タンパク質溶液を80℃で30分加熱後に冷却し、400mM食塩水中で一晩透析することでコールドセットゲルを作製しその力学物性を測定した。その結果、加熱後室温で冷却した試料に比較して氷中で急冷した試料では誘導されたゲルの破断歪み率が大きくなるとともに圧縮に要するエネルギーが増大することが示された。こうした物性の変化は急冷によるリホールディングの抑制によるものと推測され、大豆タンパク質以外のタンパク質でも加熱後の温度履歴がその後の機能特性発現にとって重要であるものと結論づけられた。
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