ビタミンEによる生体内フリーラジカル捕捉反応を明らかにすることを目的に、ラット臓器磨砕物の脂質過酸化反応時におけるビタミンE反応生成物を超高感度HPLCを用いて分析し、さらに酸化ストレスモデルとしてストレプトゾトシン投与により作成した糖尿病ラット組織中のビタミンE酸化生成物を調べた。まず、ラットの肝臓、心臓、肺、肝臓から磨砕物を調製して脂質過酸化反応を行い、反応の進行に伴うビタミンE生成物の挙動を検討した。その結果、ラット臓器磨砕物の脂質過酸化に伴い内在するビタミンEが消失し、反応生成物としてビタミンE-脂質ペルオキシルラジカル付加体(TOO-PC)やその分解物であるトコフェリルキノン(TQ)が認められた。次に、糖尿病ラットを普通食で4週あるいは8週間飼育後、血漿、肝臓、心臓、腎臓中の脂質過酸化の程度を知るためにリン脂質ヒドロペルオキシド(PC-OOH)を測定した。その結果、正常ラットに比べて糖尿病ラットの血漿、肝臓及び腎臓中のPC-OOH量が有意に高い値を示しており、糖尿病ラットでは酸化ストレスが亢進していることが明らかとなった。また、各組織中のビタミンE濃度は、糖尿病ラットと正常ラットの間で有意な差が認められなかったが、ビタミンEが脂質フリーラジカルと反応して最終的に生成するTQは糖尿病ラットの血漿、肝臓及び心臓において有意に上昇していることが示された。さらに、糖尿病ラット組織中にはTOO-PCの生成を確認することができた。以上の本研究によって、ラット組織中でビタミンEは脂質過酸化を抑制でき、さらに酸化ストレスモデルとして使用したストレプトゾトシン投与糖尿病ラットでも、ビタミンEは脂質ペルオキシルラジカルを捕捉して抗酸化作用を発揮していることが推定された。
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