生活習慣病の多くが血管の障害をきたす脂質代謝異常を伴うことが共通点としてあげられる。肥満は体組織に脂質が蓄積するものであるが、動脈硬化症の原因は全身を循環する血液に脂質が蓄積するものであるため、両者の予防・治療のストラテジーには多くの共通点がある。 特に蓄積する脂質の関係から、エネルギー摂取法やエネルギー消費法、エネルギーの塊である脂質や糖質の種類や量の摂取法などが世界中で精力的に研究されている。これまで、タンパク質・アミノ酸の脂質代謝に及ぼす影響は、あまり知られてこなかった。本研究では、タンパク質・アミノ酸の影響を「総合的」に検討し、動脈硬化症予防におけるタンパク質・アミノ酸の効果的摂取法(疾患予防の戦略的摂取法)の道を拓く「法則性」を見いだすことを目的とした。つまり、タンパク質栄養のアミノ酸スコアのような、「アミノ酸の脂質改善指数」の確立を日指した。 タンパク質の効果は、そのアミノ酸組成から発揮されるというこれまでの実験データをもとに仮説をたてた。含硫アミノ酸を中心としたアミノ酸組成から、タンパク質による血清脂質、肝脂質の改善が可能になると推測された。含硫アミノ酸の作用は、単純にその含量に比例するわけではなく、その利用率(もしくは余剰率)が重要な因子である。そこで、含硫アミノ酸の多い卵白タンパク質、含硫アミノ酸の少ないカゼインや大豆タンパク質を動物に与え血清コレステロール濃度を検討した。また、含硫アミノ酸量は普通であるがリジンが制限アミノ酸である小麦グルテンを用いて同様に検討を行った。含硫アミノ酸利用率(余剰率)と血清VLDLコレステロールとの間には逆相関関係が見られ、血清中性脂質やCYP7A1遺伝子発現ともきれいな相関関係が見られ、含硫アミノ酸の利用率が「アミノ酸の脂質改善指数」として使える可能性が示された。
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