研究概要 |
本年度はまず,タバコ由来のトレハロース分解酵素(トレハラーゼ)遺伝子のクローニングを完了し,大腸菌での発現を試みた.発現した蛋白質はインクルージョンボディを形成していたため,酵素活性を保持した状態では得られなかったものの,ポリクローナル抗体の抗原として用いることができた.これを用い,野生株のタバコにおけるトレハラーゼの発現を見たところ,その発現量は非常に低いことが確認された.同時に,トレハラーゼアンチセンス遺伝子を導入したトランスジェニック植物(22個体)を作成した.しかしながら,これらのトランスジェニック植物体中でのトレハロース蓄積量を測定した結果,トレハロースの蓄積は確認できなかった.分解系を抑えるためにはRNA干渉法を用いたトランスジェニック植物体の作出を考慮に入れ,来年度も引き続き,分解系を抑えたトレハロースの蓄積を試みる. また,同時にトレハロース合成系酵素群(TPS;トレハロース6-リン酸合成酵素,TPP;トレハロース6-リン酸フォスファターゼ)の遺伝子のクローニングも行っている.これまでに,他の植物のゲノム配列およびESTデータベースを基に,TPSおよびTPPコード遺伝子の保存領域からプライマーを作製し,PCRを行い,それぞれ増幅断片を得た.塩基配列の決定を行ったところ,得られた断片はそれぞれの遺伝子の一部であることが確認された.現在,λZAPIIベクターを用い,cDNAライブラリーを作製し,TPSおよびTPPをコードするcDNAクローンのスクリーニング中である.クローニングしたcDNAが取れ次第,次の段階であるトレハロースを蓄積したトランスジェニック植物体の作出に移る予定である.
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