研究概要 |
藍藻のスピルリナ細胞におけるコバルト元素[ビタミンB_<12>(B_<12>)の生合成に必須]やシュードB_<12>の生理機能を解明することが,スピルリナの栄養欠点の克服の近道と考えれるので平成15年度は以下の検討を行った。 1.CoSO_4添加・無添加で影響を受ける遺伝子の検討 CoSO_4添加・無添加で生育に差がみられた対数増殖期のスピルリナ細胞から全RNAを抽出・精製後,逆転写酵素にてcDNAを調製した。このcDNAをテンプレートとしてディファレンシャルディスプレイ法によりCoSO_4添加・無添加で相違のある遺伝子を検索し,現在その遺伝子の塩基配列や機能を特定している。 2.シュードB_<12>生合成系に関与する酵素遺伝子の検討 かずさDNA研究所の藍藻ゲノム解析のデータベースからB_<12>生合成系に関与する酵素(L-threonine-o-3-phosphate decarboxylase)をコードするCobD遺伝子が藍藻に普遍的に存在していた。また本酵素は比較的活性も測定しやすいため本酵素遺伝子に着目し検討した。藍藻CobD遺伝子からよく保存されているアミノ酸配列に対応するプライマーを作成し,スピルリナのゲノムDNAをテンプレートとしてPCRを行い,本酵素遺伝子の検索を行った。その結果,約200bp付近に対応するPCR産物を得ることができた。現在,インバースPCR法により全塩基配列を検討中である。 3.B_<12>依存性酵素の検討 スピルリナ細胞内でシュードB_<12>の約50%は主に分子量約150kDaのタンパク質と結合して存在していることから,シュードB_<12>は細胞内で補酵素として機能している可能性が考えられた。そこでB_<12>依存性メチオニン合成酵素活性を測定した結果,細胞抽出液中に本酵素活性が検出された。またCoSO_4添加で顕著に細胞増殖が増大する対数増殖期において本酵素活性の上昇が観察された。
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