1、小麦でん粉粒表面のナノ構造解析 でん粉の種類による糊化物性の違いを解明するために、でん粉の構成成分のアミロース/アミロペクチンの含量比と構造の違いだけではなく、油脂やタンパク質を含む多数成分からなるでん粉粒として解析する必要がある。本年度は、小麦でん粉の表面の微細構造を原子間力顕微鏡で観察し、ナノスケールの凹凸構造の存在を明らかにした。また、小麦種子の硬さに関与することが明らかにされた小麦澱粉粒結合タンパク質のピュロインドリンを分画精製し、他種でん粉粒へ結合するかSDS-PAGEで調べた。特異的にでん粉粒に結合するが、でん粉種によって結合量に差があることを明らかにした。さらに、このピュロインドリンが結合されたでん粉は乳化能が向上することを明らかにした。 2、地下茎加工でん粉を目標とした開発 酵素反応によるでん粉粒表面でのタンパク質の橋造化において、本年度は、でん粉粒表面でタンパク質を基質に最小限の水分子の存在下で酵素反応する複合構造化プロセスを検討した。でん粉として小麦粉とよく併用されるタピオカスターチを用いた。コーティング素材は、大豆タンパク質を用いた。酵素はタンパク質を重合化するトランスグルタミナーゼを用いた。天然でん粉・吸着でん粉・酵素反応複合化でん粉の3種類について比較した。酵素反応により、基質タンパク質が高分子化しでん粉粒表面をコーティングしていることを、SDS-PAGE分析と原子間力顕微鏡・共焦点レーザースキャン顕微鏡観察から明らかにした。更に、このように加工されたでん粉の糊化特性が変化した。ホットステージ顕微鏡観察から糊化膨潤が抑制されていること。DSC分析から糊化温度が上昇していること。RVA測定からピーク粘度が減少することを明らかにした。
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