研究課題
基盤研究(C)
でん粉の種類による糊化物性の違いを解明するためには、油脂やタンパク質を含むでん粉粒として解析する必要がある。本研究では、でん粉粒の表面微細構造や小麦でん粉粒結合タンパク質(ピュロインドリン(PIN))、の異種でん粉粒への結合と特性の変化について検討した。さらに、付着性が少なく糊っぼくない食感を持つ新たな加工でん粉の開発を目標とした。食品素材を用いて、でん粉粒表面でタンパク質を基質に最小限の水分子の存在下で酵素反応する、でん粉粒表面の構造化加工法を検討した。でん粉粒表面の微細構造と小麦PINのでん粉粒表面への結合でん粉の表面にはナノスケールの凹凸構造が存在した。PINは特異的にでん粉粒に結合した。結合定数は10^8M^<-1>と非常に高かった。でん粉の種類によって結合量に差がみられた。さらに、PINが100ppm結合したでん粉粒は乳化能を獲得した。これらの結果は、でん粉粒表面タンパク質がでん粉の食品用途適性へ影響することを示している。でん粉粒表面での酵素反応によるタンパク質の構造化でん粉としてタピオカでん粉を、タンパク質として大豆タンパク質を用いた。酵素はタンパク質を重合化するトランスグルタミナーゼ(食品添加物)を用いた。最小限の水を添加し、でん粉が粉体状態でも酵素反応が進行し、でん粉粒表面で基質タンパク質が高分子化し不溶化した。更に、このように加工されたでん粉粒の糊化膨潤が抑制され、糊化温度が上昇し、糊液粘度が低下した。また、タンパク質をプロテアーゼで分解すると、糊化特性は元に戻った。ワキシー玉蜀黍でん粉でも同様の結果が得られた。これらの結果は本加工法が付着性や糊っぽい食感を低減する物理的な加工法であることを示している。また、本加工法は化学薬品を用いず、乾式に近い状態で加工するため、廃水処理、高度乾燥の必要が無く、低コストで人に安全で環境にやさしい加工法として実用化が期待される。
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Publication of Unexamined Japanese Patent Applications Publication number : 2005-229907 Date of publication of application : 02.09.2005