研究概要 |
本研究では、アミロペクチンのクラスター構造形成に関与すると考えられるデンプン枝切り酵素のうち、主にプルラナーゼについて、イネ胚乳、ジャガイモ塊茎および微生物Klebsiella由来の酵素を取り上げ、その酵素化学的性質を反応速度論や構造生物学的手法を駆使して分子論的に解析した。 1.イネ胚乳由来プルラナーゼ:酵素は、極早稲種であるフジヒカリの登熟期のイネ種子胚乳から、アフィニティーカラムとゲル濾過カラムを用いて精製した。プルランを基質としたときの至適pHは5.5〜7.5、至適温度は50℃付近であった。イネ酵素の反応速度パラメータは、微生物Klebsiella由来酵素の値と極めてよく似ていたが、基質アナログによる阻害実験から、両酵素の基質結合部位の構造に違いがあることが示唆された。 2.ジャガイモ由来プルラナーゼ:酵素はジャガイモ塊茎から精製した。分子量はほぼ100kDaで、ゲル濾過の結果から、本酵素はイネ胚乳由来酵素と異なりオリゴマー構造を持つと考えられた。至適pHは5.5〜6.5で、イネ酵素に比べると中性付近の活性が低く、至適温度はイネ酵素に比べると10℃ほど低い40℃付近であった。プルランに対する血値はイネやKlebsiella由来酵素とあまり変わらなかったが、左,k_<cal>は10分の1以下と極めて小さかった。 3.微生物型Klebsiella pneumoniae由来プルラナーゼ:Klebsiella由来プルラナーゼについて、京都大学の三上らと共同でその立体構造を明らかにした。その結果、イソアミラーゼとプルラナーゼの機能特性の違いは、2つのループ構造によるものではないかと推察された。また本酵素とPseudomonas由来イソアミラーゼの基質特異性の違いを、各種基質に対する反応速度パラメータを詳細に求めることにより比較検討した。
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