研究課題
基盤研究(C)
これまでに、我々が作製した定量系を用いて主要卵白アレルゲンであるオボムコイドがヒト母乳中に分泌型IgAとの免疫複合体として存在していることを明らかにしてきた。今回は、厚生労働省食物アレルゲン定量法(通知法)を用いてオボムコイドを含む7つのアレルゲンに関して同様の解析を行った。ほとんどの検体において食物アレルゲン・IgA免疫複合体が検出された。また、この現象はその母乳を飲んでいる乳児のアレルギーの有無、程度、種類に無関係であった事から、免疫複合体の存在自体は乳児の食物アレルギーと直接関係がないことが示された。β-ラクトグロブリン特異的IgAが高く検出された母乳に10μg/mlになるようにβ-ラクトグロブリンを添加し、ゲル濾過解析を行ったところ、β-ラクトグロブリン・IgA免疫複合体量は増加し、β-ラクトグロブリン特異的IgA量は減少した。このとき、オボムコイドを加えてもβ-ラクトグロブリン免疫複合体、特異的IgAに変動はなかった。更に、アレルゲンの摂取により特異的IgAは誘導されること、抗原を結合していないオボムコイド特異的IgAが多い母乳をのんでいるほど卵アレルギーの程度は軽いこと、免疫複合体はpH3でも安定であることが判明した。また、まれにアレルゲンを単体として含む母乳があったが、このような母乳の摂取が乳児をアレルギーに導くのかもしれない。以上のように、母親の食生活が母乳を介して乳児の食物アレルギー発症に関係してくることが判明した。最後に、たんぱく質として卵白しか食べていない母親の母乳を飲んだ仔ラットが、卵白たんぱく質に対するIgGを作りにくいことから、母乳により経口免疫寛容が誘導されることが示唆された。母乳には食物アレルギーの予防効果があるのかもしれない。
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