太平洋側山地帯に属する栃木県塩谷郡塩谷町高原山中腹のイヌブナ・ブナ天然林4ha(100mx400m)大面積長期生態観測プロットの中の1ha(100mx100m)方形区と近接した0.25ha(50mx50m)方形区において、既設の計123個の種子トラップから、定期的に内容物(特にブナとイヌブナの種子、殻斗)の回収を行い、実験室に持ちかえった後、種子の状態別に分別、解析した。 種子トラップの採取と同時に、ブナ、イヌブナの樹上において、熱帯の林冠研究で最近使用されている登山用ザイル、登攀器具、安全確保器具による木登り技術と簡易林冠観測梯子を導入して、イヌブナ、ブナ両種の種子を採取するための梯子をブナ・イヌブナ各1本づつ取り付けた。以上の調査を大久保が実施した。 実験室に持ちかえったブナとイヌブナの種子の分別については、研究分担者の鎌田が独自に開発した種子外部の食害痕から食害昆虫を同定方法を採用し、予め種子食害の状態別形態図(写真)を作成し、同定の個人差を極力小さくする方法を採用した(1次同定)、そして一次同定で不明種となった種子の食痕については、研究分担者の鎌田が種子食性昆虫相の把握を行った(二次同定)。この二段階の同定プロセスを経て、精度の向上を図った。 以上の結果を過去15年の種子落下に関しての蓄積データ、気象データ(気温、降水量)と比較し、両種子の豊凶非同調性に対する種子食害昆虫などの生物的要因、気象などの外的要因に関する解析を行った.
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