本研究ではミズナラが優占する二次林を対象とし、高齢の落葉広葉樹二次林が成長によってどの程度二酸化炭素を吸収しているのかを推定した。根は樹木の生物量の大きな部分を占めているが、採取することが困難なため生物量を推定する際の制限要因となることが多い。そこで、根に関する諸量を推定するため、特に根に関する変数と樹木地上部に関する変数との間の関係を検討した。 まず、ミズナラが優占する落葉広葉樹二次林内にプロットを設置し、このプロットの周囲から資料木を採取した。資料木の各部分の生物量を測定すると共に、根部については直径によって5つの級に分類して生物量、長さ、面積、材積を測定した。これらの根部に関する4変数の直径級ごとの配分を求めた。次に、根に関しては採取する際、地中に取り残される部分が必ず出るため、試料根の測定値を利用して切れた根の切断面の直径から失われた部分を推定するための式を導いた。そして、失われた部分を含めたすべての根の生物量、長さ、面積・材積を胸高直径など樹木地上部から推定するための式を導いた。その結果、根部の各変数を推定するための樹木地上部の変数として胸高直径が望ましいことが示された。地上高0.3mの直径は根系と高い相関関係があるので、胸高で枝が分岐している場合にはこの直径が根部の各変数を推定するために有用であることが示された。以上の結果を用いて、各プロットにおける樹木の生物量とその成長量を推定し、各プロットにおける炭素蓄積量および二酸化炭素吸収量を推定した。
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