研究概要 |
光と養分の資源量とその比率を変えることにより,2つの資源の絶対的および相対的不足に対する樹木の資源利用様式の可塑性をアカメガシワ実生を用いて調べた。島根大学構内にある実験圃場において、金属パイプを組み合わせて構築した小屋型のフレームの四方と上部に黒色の寒冷紗を取り付け、光資源の異なる処理区を設定した。そのなかでバーミキュライトを満たしたプラスチックポットにアカメガシワの発芽種子を植え付け、濃度の異なるホグランド液を与えることにより、養分条件の異なる処理区を設定した。 アカメガシワ実生は、養分の絶対的不足と相対的不足に対してT/R比を小さくして窒素の獲得量を多くし、樹体の窒素濃度を低下させることや落葉前の窒素の引き戻し率を大きくすることにより,窒素の利用効率を向上させた。また,アカメガシワ実生は、光資源の絶対的不足と相対的不足に対して,C/F比を小さくし、葉面積、比葉面積の値を大きくすることにより、光合成産物を葉に多く投資し、さらに葉を薄くすることにより受光量を向上させた。また、緑葉の窒素濃度をあげることにより窒素の利用効率を下げてでも、光資源の獲得効率を向上させた。 光と養分のどちらか一方の資源を多くした処理において、ふたつの資源がともに少ない処理よりもアカメガシワ実生の個体重が大きくなったことから、光の不足を養分で養分の不足を光で補う、つまり光と養分の間で資源のトレードオフが行われていると考えられた。この資源のトレードオフは、形態的および生理的可塑性により不足する資源の獲得量を多くし、その利用効率を上げることによって実現されていた。
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