研究概要 |
本研究の目的は、日本における広葉樹の工芸的利用の実態をアンケート、フィールド調査によって把握し、明治末に農商務省山林局で行われた調査結果と比較することによって、今後の広葉樹の利用に関する具体的指針を導きだすことにある。平成15年度は九州と沖縄県、平成16年度は中国地方と四国地方、平成17年度は近畿・北陸・東海の調査を実施した。 本年度は、関東・東北・北海道の市町村・森林組合1,039カ所にアンケートを依頼し、46.5%を回収した。これまでの回収では最も高い値を示したが、その半数以上が「該当無し」という回答であった。市町村、森林組合が把握する広葉樹の工芸的利用は、以下のような内容である。 (1)広葉樹の種類 ケヤキ、ミズナラ、コナラ、ダケカンバ、ハリギリ、トネリコ、エンジュ、カバ、ニレ、ヤマグワ、オニグルミ、サワグルミ、イタヤカエデ、ウリハダカエデ、シナノキ、サイハダカンバ、ノリウツギ、タモ、アオダモ、ホオノキ、トチノキ、ハンノキ、シラカンバ、セイヨウハコヤナギ、バッコヤナギ、カツラ、ノリウツギ、ブナ、キハダ、ヤナギ、ミズメ、ミズキ、クリ、シウリザクラ、ヤマザクラ、エゴノキ、ウルシ、ツゲ、マユミ、ハクウンボク、シマガキ、タブノキ、ツバキ、モミジ、キリ、 (2)広葉樹の利用 家具用材、挽物用材、木彫品、楽器、割り箸、まな抜、蛸箱、パチンコ台、碁盤、爪楊枝、将棋駒、鞘、下駄 (3)植林 森林税を徴収している県もあるが、殆どの市町村では、広葉樹の積極的な植林は行っていない。 (4)市町村におれる広葉樹利用の把握 市町村においては、林産加工品の掌握がなされておらず、いわゆる町おこしに関連のある産業を把握している程度である。それでも少数の市町村では、伝統的な広葉樹の利用を保護する政策を実施しており、使用樹種名についても、詳細に把握している。 (5)明治期末の利用との比較 明治末には農商務省山林局で広葉樹を調査し、約120種類を確認している。本研究では46種類と少なく、広葉樹の利用が大きく衰退していることが検証された。
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