本研究の目的は、日本における広葉樹の工芸的の実態をアンケートとフィールド調査によって把握し、明治末の調査結果と比較することで、今後の広葉樹利用に関する具体的指針を導き出すことにある。 平成15年度は九州地方と沖縄県の調査、平成16年度は中国地方と四国地方の調査、平成17年度は近畿地方、中部地方、北陸地方の調査、平成18年度は関東地方、東北地方、北海道の調査を行った。その結果、次のような点が明らかになった。 1)市町村の2割から3割しかアンケートの回答がなく、その回答でも約半数程度は広葉樹の利用について具体的な記述がない。すなわち、広葉樹利用の実態を多くの市町村ではしていないということになる。 2)現在利用している広葉樹の種類は、明治末期の調査によって確認された種類の3割の40種類である。その中でもよく使用されているものは10種類程度である。 3)広葉樹を取り扱う全国的な組織はなく、過去に集散地となっていた熊本県の人吉市等においても、現在は組織的な取り組みで販売を行ってはいない。 4)広葉樹を専門に取り扱う製材業は、近年資源がないため廃業が相次いでいる。 5)広葉樹の工芸的な利用を目的とした植林や育成を行っている市町村は極めて稀である。沖縄県の石垣市では、過去に乱獲によって資源が枯渇化したことから、現在は植林と育成を積極的に行っている。
|