1 これまでスギの老齢林に関する葉の三次元分布構造を調べたデータはない。そこで老齢スギ林を中心に樹齢の異なる林分で着葉分布構造の違いを調べた。鹿児島大学高隈演習林に植栽された屋久島原産の実生スギ(以下、ヤクスギ)の20年生、44年生、78年生、88年生の林分から、平均サイズに近い個体をそれぞれ2-3本選び、25cm立方のセルごとに葉重量密度を測定した。さらに、1mごとにスギ小枝の画像を角度変えて撮影し葉重量とシルエット面積の比から単位葉重量あたりの受光面積(受光効率)を計算した。 樹冠表面からの着葉最下限までの長さを着葉層の厚さとしたとき、厚さは樹齢による違いが見られなかった。着葉層の厚さは樹冠の外側になるほど薄くなった。また葉の水平分布パターンは樹齢に伴う違いは見られなかった。しかし、着葉層内の葉のない空間の割合は老齢の個体ほど多く、老齢個体ほど葉密度の変異が大きかった。垂直変化では老齢ほど上方に集中するパターンを示したが、これは枯れ上がり現象によるものだけでなく老齢化に伴って樹冠の先端が丸くなる現象による影響を受けていることを示した。また44年生林分でヤクスギとオビアラカワサシスギを比較したところ、ヤクスギは梢部での樹冠面積が大きかった。 2 林冠構造をモデル化したのち、複数の列状の伐採をしたときの、林床植物のガス交換速度に及ぼす影響をシミュレートし、最適の列幅を検討した。この内容は来年度IUFRO世界大会において発表する予定である。
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