着葉構造の不均一に関する情報が不足しているため、現実に近い林冠構造をモデル内に再構築できないために、葉分布の不均一さの森林内の微気象に及ぼす影響は定性的理解にとどまっている。そこで、林冠構造の複雑さが森林のガス代謝にどの程度影響するかを明らかにするために、1:着葉分布の不均一さを発達ステージ間で定量的に評価すること、2:森林のガス代謝機能上に及ぼす着葉分布の影響を明らかにすることを目的とした。 1-1 針葉樹人工林の葉の三次元構造 スギ着葉三次元分布の葉密度の変動は老齢個体ほど大きかった。しかし葉のあるセルでの葉密度には大きな違いはなく、葉密度の変動は葉の無いセルの割合により決定された。ある閾値以上の葉密度を持つセルの連続体で表現できるクラスターの分割程度は、樹冠全体の葉の無い空間の割合と強い関係があった。 1-2 亜熱帯林の林冠内の葉面積指数の変動 徳之島の亜熱帯広葉樹林4ヘクタールのLAIを10m×10m単位で測定した結果を用いて、着葉分布の不均一性を評価した。 2-1 ブナの着葉分布の不均一性と樹冠のガス交換 ブナ樹冠内のLAD分布をポイントコドラート法により測定し、枝葉の受光効率と共に小セルごとの光予測を行った。予測された光変化パターンは実測値とほぼ適合し、モデルで推定した光合成速度は階層別に円柱近似したモデルに比べて13%小さかった。 2-2 林冠の複雑さと林床のガス交換速度 スギ人工林にギャップ率が等しいが5段階の粗さの異なる林冠モザイク構造を設定し、モザイク構造が林床の光合成に及ぼす影響を、アカメガシワ、イチイガシ、ススキ、ホソバタブの4種の光合成ポテンシヤル分布を比較し、モザイク構造が無視できないことを示した。また北向きのヒノキ林に樹高のそれぞれ1.5倍および0.3倍のギャップ幅を持つモザイクを設定し、林床にヤマザクラを配置したときの光合成ポテンシャルマップを作成した。
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