研究概要 |
林冠内の葉の分布状態は森林内の微気象、ガス代謝機能、幹の形を決定する重要な要素である.葉は林冠内で不均一に分布している。クラスター構造の形成やギャップモザイクは林冠構造をより複雑にしている.しかしながら,測定の難しさから成木の葉の三次元分布に関する研究は少なく、葉のクラスター形成に関してほとんど解明されていない。本研究では、着葉分布の不均一さを定量的に評価し,樹種間,発達ステージ間での違いを知ることと、林冠の着葉分布の不均一さがガス代謝機能へ及ぼす影響を知ることを目的とした。 1.スギ人工林の葉のクラスター構造を定量化し、年齢に伴って樹冠内の葉分布が不均一になりクラスター化するかどうかを調べた。78年、88年生の老齢スギは20年の弱齢スギ、40年の壮齢スギに比較して、葉分布は不均一であり、葉クラスターが細分化していた。これらの着葉の不均一性は樹冠内のギャップ率と強い関係があった。 2.タブノキとスダジイ樹冠の葉の三次元分布を調べ、両者の葉クラスターの構造を比較した。スダジイはコンパクトな葉クラスター構造を示し、シュート構造が関与している可能性があった。 3.ブナ樹冠の葉の二次元分布を調べ、その着葉密度分布パラメータを用いて樹冠内の光の時空変化や単木の蒸散速度・光合成速度を推定するモデルを作成した。 4.ギャップモザイク構造は林冠構造の複雑性の重要な要因である。ギャップモザイク構造が林床の光環境および稚樹の光合成速度に及ぼす影響を予測するモデルを作成した。ギャップモザイク構造は林床稚樹の光合成速度の水平分布や稚樹のニッチの広がりに大きく影響した。
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