研究概要 |
本年度は前年と同じく北海道東部網走湖に注ぐ網走川流域を研究対象地として,湖沼に流入する河川水に含まれる土砂流出実態(融雪時)の調査,および湖沼水産動物に及ぼす影響に関する調査をおこなった.4月の融雪時の浮遊土砂濃度は,本流および左岸側支流域で100〜300mg/l前後の濁水が発生し,この濃度が2週間以上継続する傾向が見られた.昨年計測した夏〜秋に発生する濁水は2〜3日程度で減少したが,この傾向と異なり減少傾向に大きな違いが認められた. 一方,湖沼域の重要な水産資源であるシジミ資源について,湖岸の50測線,深さ1,3mにわたって採取されたサンプルから,水深1mにおけるシジミ軟体部肥満度(軟体部乾燥重量/体積指数×1000)は15.4〜25.6(平均19.0),水深3mでは13.5〜20.0(平均17.5)の範囲にあり,水深が浅いほうが太りは大きい傾向にあった.シジミの肥満度の地理的分に関しては,河川が流入する湖南部と流出する湖北部で低く,その間の湖西部,湖東部で高い傾向にあった.河川流出部で高い傾向がある理由として,オホーツク海から塩水の逆流入の影響を受けており,高い塩分濃度が成長を阻害している可能性が考えられた.一方,湖南部で成長が悪い原因としては,河川上流部から流入する細粒の粘土ないしシルト分の影響によるとみられた.軟体部の肥満度と細粒成分が含まれる割合は有意ではないが負の相関が認められた.次年度はより詳細に水産資源との関係を解明する.
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