研究概要 |
現在埋め立てや河川改修により汽水域におけるハマボウ生息環境の消失は著しく、宮崎県内におけるハマボウ群落は減少の一途を辿っており人為的再生の必要性が高まっている。そこで汽水域におけるハマボウ林の人為的再生の際に必要となるハマボウ種子の耐塩水性を実験的に評価した。 小丸川入り江に位置するハマボウ群落より採取したハマボウ種子に硫酸処理を施した後、縦20cm、横40cm、深さ15cmのプラスティック製容器に、厚さ2cmのウレタン樹脂を敷き詰めそれぞれNaCl濃度20,000(ppm)、15,000(ppm)、12,500(ppm)、10,000(ppm)、7,500(ppm)、5,000(ppm)、2,500(ppm)、0(ppm;水道水)塩水500ccで湿らせて播種床とし、そこにハマボウ種子を100粒づつ置いて室内に放置し、1ヶ月後の発芽状況を観察した。 その結果、ハマボウ種子が発芽する期間は4〜10月間に限定され11月〜翌年3月の期間は休眠期に相当することが推測された。さらに、ハマボウ種子の発芽段階における許容最大塩水濃度は15,000〜20,000(ppm)で、その耐塩水性が最大となる季節は8〜9月であることが明らかになり、ハマボウ種子の耐塩水特性は既往研究で明らかにしたハマボウ差し穂と同等であった。ハマボウ種子の許容塩水濃度は、通常の塩生種と比較すると高い数値であることも判明した。さらにハマボウ種子の塩水冠水下における発芽率は、種の採取時期(P<0.001)、発芽する季節(P<0.005)、塩水濃度(P<0.001)と有意な関係にあることが統計的に示された。 以上の本年度結果および昨年度の研究結果から、かつては南九州地域の汽水域に広く分布したオオタチヤナギとハマボウが耐塩水性に優れ南九州汽水域への導入に最適な樹種のひとつであることが明らかになった。
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