研究概要 |
日本固有種ヤマドリの人工林環境利用実態を調査するために、東京都八王子市にある森林総合研究所多摩森林科学園において、野生個体のオス1羽を捕獲した。捕獲後アメリカATS社製のネックレス型発信器(12,5g)を首に装着し、放鳥した。6月以降、毎月4〜5日間の連続追跡を行い、行動圏、環境利用、ねぐら利用形態について解析を行った。調査期間中は、30分〜1時間おきに追跡し、位置を特定した。行動圏面積を最外郭法で求めたところ、8月に2.0haでもっともせまく、2月に10.7haともっとも広かった。また、1日あたりの行動圏面積は、やはり8月に0.8haでもっともせまく、10月で1.8haともっとも広かった。行動圏内での植生の割合と方探位置の植生とを比較し、イブレフの選択指数(E)を算出したところ、6月に広葉樹林を、7,8月に人工林を高く選択しているという結果が得られた。行動追跡の結果、ねぐらの位置が特定できた。ねぐら位置は、大きく5地域に分けられ、季節によって、各ねぐらの利用頻度に差があることが分かった。沢近くでねぐらをとることはほとんどなく、沢で採食していても日没近くになると、斜面を登りはじめ、中腹もしくは尾根沿いに到達した後にねぐら入りすることが明らかになった。また、10月から2月にかけて、つがいで同じねぐらを利用していることが明らかになった。また、ねぐら環境は、広葉樹林もしくは広葉樹が進出した人工林がほとんどで、人工林のみの環境はあまり利用されなかった。これらのことから、ヤマドリは、行動圏内に人工林環境を多く含むが、ねぐらとしてではなく、おもに採食もしくは通過地としての利用をしていると考えられた。
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