研究概要 |
日本固有種ヤマドリの人工林環境利用実態を調査するために、東京都多摩森林科学園のヤマドリ雄1個体の行動追跡を5月まで継続し、行動圏、環境利用の季節変化を調べた。各月の行動圏を最外郭法で推定した結果、月当たりの行動圏面積は、最小が4月で1.47haであり、最大は、2月の10.65haとなった。また、1日あたりの行動圏面積は、最大で9月の1.82haであったが、最小は4月の0.56haであった。全部で63日間についてねぐら位置を確認したが、その大半が沢から斜面を登ったやや平坦な場所にあり、沢でねぐらをとることはほとんどなかった。ねぐらの環境は、広葉樹がかなり混入したスギ・ヒノキ人工林でもっとも多く(37.5%)、ついで広葉樹二次林(35.9%)、広葉樹のほとんど混じらない人工林(23.4%)と続いたが、サクラ植栽林でねぐらをとることは少なかった(3.1%)。イブレフの選択指数を用いて、各月における行動圏内の環境別面積と利用ポイント位置との間での環境選択度を算出したところ、サクラ植栽林とは、常に負の値を示し、とくに7月,8月、12月および4月には、かなり高い負の選択を示した。逆に、広葉樹二次林とは、7,8月を除いて、常に高い選択性が得られた。また7,8月は人工林の選択性が高かった。狩猟期におけるヤマドリの食性を調べるために、1999年〜2001年に収集したヤマドリのそ嚢17個(岩手県(6)、山梨県(3)、青森県、山形県、群馬県、栃木県、東京都、神奈川県、鳥取県、岡山県(1))について内容を分析した。その結果、食物としては、ほとんどが植物質のものであり、植物体の部位別では、葉や果実・種子が多く、茎、根の部分は少なかった。また、葉部では、シダ類が頻度、数量ともに非常に多かった。果実・種子では、コナラ、ミズナラ堅果が多かった。
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