研究概要 |
鳥獣保護区でもある栃木県県民の森で放鳥個体に発信器を装着して行動追跡を行い、環境利用、生存率などを調べた。発信器重量は10.7〜16.6gで放鳥時体重の1.01〜2.01%であった。放鳥後の位置確認は、1週間に2〜4回のペースで行い、月齢、性別、放鳥季節、放鳥場所の環境による放鳥個体の生存期間の差を調べた。放鳥個体の月齢を放鳥時に12ヶ月齢未満のものと13ヶ月齢以上に分けたところ、体部計測値のうち、オスでは、自然翼長、嘴長、体重で13ヶ月齢以上の個体が有意に大きな値を示したが、放鳥後の生存日数には有意な差は認められなかった(それぞれ33.4日と45.8日)。メスでは、自然翼長と嘴長で13ヶ月齢以上の個体が有意に大きく、生存日数も長い生存期間を示したが、有意差は認められなかった(それぞれ、33.3日と68.4日)。また、オス全体では、平均生存日数が39.2±8.9日(SE,n=34)であったのに対して、メスでは、54.6±13.7日(SE,n=38)とやや長かったが、有意な差ではなかった。ついで、放鳥時期による生存日数の違いを調べた結果、夏期(6〜8月)に放鳥した個体がもっとも長期間生存し、次いで春期(3〜5月)、冬期(12〜2月)とつづき、秋期(9〜11月)に放鳥した個体でもっとも生存期間が短いことが明らかになった。また、夏期と秋期の間には有意な差が認められた。放鳥を広葉樹林とスギ・ヒノキの壮齢植林地に分けて実施したところ、前者がやや長い生存日数を示したが、有意な差ではなかった(広葉樹林:49.6±11.7日、植林地:44.4±12.0日)。行動圏は、オスで86.0±13.8(SE,n=6)、メスで39.0±11.0(SE,n=5)とオスが広かったが、有意な差ではなかった。
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