研究概要 |
スギ、ヒノキ及びコノテガシワの各樹種における雄花生息性微生物群を明らかにするため、1年を通して、それぞれの雄花から糸状菌類及び細菌類の分離試験を行った。3樹種の雄花に生息する菌類種には季節を通して大きな変化はなく、Pestalotiopsis sp.、Epicoccum sp.及びCladosporium sp.が、普遍的に雄花に生息する菌類であることが判明した。中でも、Pestalotiopsis sp.は3樹種に共通して高い頻度で分離され、Pestalotiopsis sp.が雄花に優占的に生息していることが示唆された。また、黒点枝枯病菌は裂開中の雄花から、Pestalotiopsis sp.、Epicoccum sp.及びCladosporium sp.と同時に分離されたことから、これら3種の菌類と共存し、特に、花粉飛散中及び終了後の雄花内において、旺盛に増殖することが推察された。 細菌類の分離試験では、スギ雄花からは6菌株、ヒノキ雄花からは4菌株、コノテガシワ雄花からは7菌株の細菌類を得た。現在、黒点枝枯病菌と何らかの相互作用を有する株の選抜試験を行っており、それらの同定作業を実施する予定である。 スギ花粉懸濁液(濃度0.1,0.5,1.0,3.0,5.0%)、殺菌水及び無水スライドを用意し、これらに黒点枝枯病菌の子のう胞子を落下させ、経時的に子のう胞子の発芽率と発芽管長を測定した。花粉を含んだすべての試験区で発芽が認められ、花粉含有量の増加に伴って発芽率及び発芽管長の増加が見られた。また、花粉を含まない殺菌水においても低率ながら発芽が見られたが、無水条件では全く発芽しなかった。以上から、子のう胞子の発芽には水分が必須であり、花粉が発芽を促進することが明らかになった。
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