研究概要 |
スギ,ヒノキ,ヒバ及びコノテガシワの各種雄花から共通して高頻度で分離された菌類2種,Pestalotiopsis sp.及びEpicoccum sp.,を用いて,PDA培地上で黒点枝枯病の菌叢及び子のう胞子と対峙培養を行い,これら2菌種と黒点枝枯病菌間における拮抗性の有無を検討した。菌叢同士による対峙培養では,コノテガシワ雄花から分離されたPestalotiopsis sp.とEpicoccum sp.の2菌種が黒点枝枯病菌(Stromatinia cryptomeriae)に対して顕著な拮抗反応を示し,黒点枝枯病の菌糸体の生育を阻害する現象が見られた。しかし,スギ,ヒノキ及びヒバの雄花から高頻度で分離されたPestalotiopsis sp.と黒点枝枯病の菌叢との対峙培養では,明瞭な抗菌反応は見られなかった。また,Pestalotiopsis sp.及びEpicoccum sp.の菌叢と黒点枝枯病菌の子のう胞子との対峙培養では,コノテガシワから分離されたEpicoccum sp.において,子のう胞子の発芽を抑制する現象が見られた。すなわち,実験開始24時間後では,対照区の子のう胞子の発芽率67%に対し,Epicoccum sp.区では0%,7日後では対照区98%に対し,Epicoccum sp.区は僅かに2%の発芽率であった。以上の結果,コノテガシワから分離されたEpicoccum sp.が黒点枝枯病菌の生育を阻害することが判明し,本病の雄花感染に重要な役割を持つことが示唆された。 スギ花粉中の成分が胞子発芽と菌糸生長に与える影響を明らかにするため,スギ花粉80%エタノール抽出物を水層と酢酸エチル層に分け,それぞれ胞子懸濁液に添加した。対照には滅菌水を用いた。その結果,胞子発芽促進は水層に認められ,酢酸エチル層には認められなかった。水層を展開したTLC上で,発色試薬によりアミノ酸と糖の存在が確認され,これらが胞子発芽と発芽管伸長の栄養源となっている可能性がある。
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