研究概要 |
1 交通事故等によるニホンジカ斃死個体や、有害鳥獣駆除捕獲個体から筋肉サンプル(29個体)、毛サンプル(64個体)、肝臓サンプル(38個体)等を採取した。また、シカ生息地において実施した糞粒法調査の中で、新鮮と思われる糞を採取した。能勢・高槻・箕面の3個体群のうち高槻のサンプルの入手が困難であるため、防除網にかかり死亡して白骨化した個体から骨サンプル(5個体)を採取した。 唾液サンプルを採取するためのトラップを開発中である。現在、濾紙を用いた採取を検討している。 GPSラジオカラーを用いて実施した行動圏調査(能勢及び高槻で計5個体)によりシカが頻出する地域や地形のパターンが明らかになったので、これら集中する地点でトラップによる試料採取を検討している。 2 DNA抽出及びプライマーの決定に関しては、試料は、能勢、箕面及び高槻の3個体群から回収された個体から採取した毛(n=7)、筋肉(n=7)、骨髄(n=6)及び糞(n=3)を用いた。これらの試料のうち、同一個体で2 3種類の試料のあるものを検討に用いた(骨髄を除く)。 DNA抽出は、抽出キットを用いた(Easy-DNA Kit,Invitrogen、QIAamp DNA mini Kit,QIAamp DNA Stool Mini Kit,QIAGEN)。PCRはThermal Cycler (BIO-RAD)を用い、アガロースゲル電気泳動後、エチジウムブロマイド染色し検討した。 プライマーは、BL42、BM203、BMC1009、BM888、BM4107及びMB009の6種類を用いた。 結果、全ての試料からPCR法に十分な量のDNAが抽出された。 筋肉からは最も良好な結果が得られ予想された大きさのバンドが観察された。骨髄は、サンプルが長期間野ざらしになっておりバンドはほとんど見られなかった。糞及び毛からの抽出では、筋肉に次いで多くのバンドを観察できたが、一部に観察できない試料があり、さらに抽出法を検討中である。 個体群による違いを筋肉試料についてみると、能勢個体群は全て同じであったが、箕面個体群は2種類に分かれた。そのうち1種は能勢個体群と同じであった。高槻個体は能勢個体群に似ているが、一部異なるパターンを示した。
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